【これが人間?】アンドロイドが描く「人間性」の姿とは/ゲームさんぽ×デトロイト#03
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Published 2023-05-30
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【腕の彫刻について】
作者:robert graham
作品名:Monument to Joe Louis (the Fist)
ジャック・ジョンソン以来、黒人ボクサーとして史上二人目の世界ヘビー級チャピオンになったジョー・ルイス。彼に捧げられたこの彫刻には「反-人種差別の意図が込められている」...と、英語版wikipediaには書かれていました。
それを読んで「お、さすが『デトロイト』!」と思ったものの、いまいちソースがはっきりしないので、ちょっと追加で調べてきました。とりあえずwikiはこちら↓
en.wikipedia.org/wiki/Monument_to_Joe_Louis
*
結論から書くと、この作品に「反-人種差別の意図」を読み取るのは普通にアリかなという感じ。以下、箇条書きで整理します。適当に書いてたら意外と長くなってしまいましたがご容赦を!
・20世紀前半に活躍した伝説的なボクサー、ジョー・ルイス。彼は(当然ながら)現代以上に苛烈な人種差別の中を生きていました。
・セコンドはジョー・ルイスに対して次のようにアドバイスしていたそうです。「チャンピオンになるためには、まず紳士でなければならない。ほんとうの闘いはリングの中ではなく、リングの外にあるんだ。絶対に相手の悪口をいうな。試合の前は相手をほめあげろ。おなじようにほめるんだ。それから白人を倒したあとは、絶対に笑うな」。最後の部分をもう一度引きます。「白人を倒したあとは、絶対に笑うな」。
・1930年代、イタリアではムッソリーニが、ドイツではヒトラーが政権を握り、アメリカ国内に反-ファシズムの感情が高まる中でルイスはイタリア、ドイツ両国のチャンピオンを相次いでKO。黒人からも白人からも愛される国民的英雄となりました。
・さらに第二次大戦に際しては陸軍への入隊を自ら志願。不動の人気を獲得するわけですが、ルイスのこうした活躍、模範的態度は、大戦後に差別的な制度が撤廃されていくための大きな推進力になったそうです。参照↓
「米国プロスポーツ界における差別問題に関する序論」
www.jstage.jst.go.jp/article/jpspe1979/12/2/12_2_8…
・また、ナチスドイツのチャンピオンを破ったことに関してはそれを「アーリア人の優越性」云々といった、人種差別的なイデオロギーに対する勝利...として受け止める向きもあるようです。参照↓
www.dailydetroit.com/2015/07/10/the-real-story-beh…
・四角錐を拳が突き破るような形をした彫刻は、ルイスの闘い、「リングの中ではなく、リングの外に」もあった闘いを表現したもの、と考えて良さそうです。
・また柱だけの四角錐は、スカスカのピラミッドのようでもありますね。これを「人種差別的な空虚なヒエラルキーを象ったもの」といったふうに解釈するなら、それをルイスの腕が突き破る構図の意図するところは一層明白な気もしてきますよね。差別に対する闘争、そして勝利?
・ま、「ルイスの腕がもぎ取られ、宙吊りになったまま静止させられている...」みたいに皮肉な解釈をすることだってできそうですけどね!
・それさておき『デトロイト』のオープニングでこれが映された意味を深読みするのもちょっと面白そうな気がしてきました。さきほど私はルイスの腕を吊り下げているフレームを人種差別的なヒエラルキーに重ねて読みました。でもそういえば、『デトロイト』の作品内でもこういう三角形ってよく目にしますよね。そうそう、サイバーライフ社の制服についてるあのマークですよ。ということは.......。
・ちなみにあの彫刻ってストーリーの後半でも出てきたりしましたっけ?
・自分は全然記憶にないんですが、もしそういう象徴的な意味あいを強調するような演出があったら面白いなーと思いました。どうだったかなー。
・もうこれはラストまで収録やるしかないかぁ...。いやー名作〜!
(了)
【出演者】
名越康文
精神科医。ご自身のチャンネルでもゲーム実況たくさんやってます!↓
名越康文TV シークレットトーク
youtube.com/c/nakoshiyasufumiTVsecrettalk
いいだ
編集者。ツイッタランドによくいます。
twitter.com/UraIida
【ネタバレ注意】
『Detroit』は無数のエンディングに向けて細かく物語が分岐していきます。自分でプレイしてから動画を見る。この動画を見てからプレイしてみる。どちらも違った楽しみがあるとは思いますが、まずまっさらな気持ちで作品を楽しみたいかも?という未プレイ勢はぜひ先にプレイしてみてください。やって損はない名作だし(いやまじで)、10〜15時間程度で一周行けますよ!!
【制作関係者】
editor:Kawanobe Yukinori & Iida
art direction/design:KANAISASAKI
motion design:Oka Hiromu
music:Hercelot
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ゲームさんぽとは...?
いろんな人と一緒にゲームをやって、視点の違い、もっと言えば世界の見え方の違いっぷりを楽しむ動画シリーズです。よければ発案者である「なむ」さんのサイトにもお参りして、企画の歴史を辿ってみてね!
www.saynum.com/
All Comments (21)
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カール好きすぎる
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レオの視点で見ると子供の時に自分にも母親にも目を向けなかった父親が年老いてからアンドロイドを自分の息子みたいに扱ってる
わけだから「今アンドロイドにできるならなんで昔の自分にはしてくれなかったんだ」って思うよね -
マーカスに嫉妬する息子に「この息子も感性がビビットだから嫉妬してる」という解釈をしているのがハッとさせられました
確かに嫉妬深い人っていうのは感性が鋭すぎたり周りを細やかに見過ぎているからちょっとしたことに嫉妬の種を見つけてしまうタイプが多いですよね -
カールの息子のレオですが、「お前は父親のくせに息子の俺を愛してくれない」という不満や怒りだけじゃなく「お前は俺の母親も愛さなかった」という憎悪が混じっているような気がしています。
というのも、レオの様子から、女性に対する怒りや蔑視を感じないからです。レオの親への不満は父親だけに向けられている。声も子供みたいに高いし、少なくとも低い声で恫喝して弱者をいたぶる経験はなさそうな気が。
(アリスの父親のトッドには、明らかに女性への怒りや怯えを感じるのですが)
レオはニカッと大げさに口角を上げて笑うけれど、上下の前歯が閉じられたままです。ふつうは笑うと上下の歯は離れて、口の奥が見えますよね。レオは奥歯をきつく噛み締めたまま笑うんです。
カールが制作中の青い絵画(ヒトラーやガンジーみたいな)ですが、私にはレオに見えます。 -
レオに対して自分でプレイしていた時は登場した瞬間に「嫌なヤツが来たぞ!」と嫌う準備を自分はしたなと今ハッとさせられた。
「嫌悪していい奴」「このゲームをプレイする人にとって共通する敵」みたいな感覚でこの人を悪く言うことになんの罪悪感も抱いていなかった自分にお二人の反応から気づいて、自分は違うと思っていても無意識に偏見を持って人を見てしまうんだなぁと考えさせられました。
それで自己嫌悪に陥るとかではなく、「自分は偏見を持っている」と自覚して生きていきたいなと。これもゲームさんぽのおかげで得た感覚だなぁ。 -
カールは自分が後悔した、人生を教えるということを、アンドロイドに教えて学ばせることで良い父親をやりなおしてるように思うんねよぇ
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人間性、安らぎで意図せずにカールの絵になるのがもう、すごい
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カールって、息子とうまくいかなかった部分をマーカスでやり直している感はある。ブイブイ言わせてた頃に息子に関心を向けられなくて、それをレオも根に持ってるんだと思う。
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父親に愛されずに落ちぶれたレオに同情してたけど他の動画や配信だとボロクソに言われて嫌われまくってたのを見てきたからお2人が冷静に寄り添った解釈をされてるのが本当に嬉しかったです
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レオのことを嫌悪したり哀れむのではなく、本質である彼の繊細さや嫉妬心を見てくれてるのが本当に凄いと思う。
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多くの場合カールが人格者でレオがダメ息子ってイメージになりがちだけど
カールは若い頃絵にかまけて家族をなおざりにしてたタイプなんじゃないかなって思ってたから、レオにも同情してくれてめっちゃ嬉しい……! -
レオに対して嫌悪感しか持て無かった自分が恥ずかしい……。
私自身もカールのような父親を持って生まれ苦しんで来て、周りの理解が得られないことに対してはもっと苦しんできたはずなのにいざそういう人を目の当たりにすると何も気づけなかった……。
一気にレオとカールの見方が変わってくる…。 -
レオの母親はカールの絵のファンで、カールは別に彼女のことが好きだったわけでもないけど彼女を妊娠させ、その後一切関わることをしなかった…みたいなことがゲームの中の設定資料みたいなところに書いてあった気がする
カールはいい画家だしマーカスにとってはいい人間だけど、レオにとってはクソ親父 -
カールはマーカスに甘える事で活力を取り戻しているようにも見える。同時に自身の老いと迫り来る死への虚無感や諦めから人に落胆し、だからこそ命に限りの無いアンドロイドに希望を見出しているように感じられるなぁ。
まぁ勝手な思い込みですけどね。 -
名越先生がカールを二重人格的な所があると言っていたけども
公式のキャラクター紹介欄のカールを見ると「昔はやんちゃをしていた」とあるからほぼ合ってるのよね -
マーカスの体癖から見た「人間性」と「安らぎ」を「カールに安らぎを与えたい」に結びつけて結果「カールの絵を描く」に着地させるis美しすぎて何事…!??驚きすぎて何度も見返しちゃった、素晴らしすぎる
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おそらく〝レオが一番愛情を受け取りたかった年頃に、カールは全盛期で家庭を省みなかった〟という様な背景が、レオの登場から僅か数秒の間だけでも充分に見て取れますね。
レオも潜在意識では、今のカールが愛情表現の不足を後悔している事に気付いていそうだけど、顕在意識はかつての愛情の枯渇を手放せずに苦しんでいる、という事でしょうか🤔💭 -
カール、実の息子のレオを育てる際に出来なかったこと、こうしてやればよかったと思ったことを今家族のように傍にいるマーカスに対してやってるのかも?と思った
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カールは決してレオを愛していないわけではないんでしょうね。叱っているときの声色がとても優しい。
でも、どう接したらいいか分からないのかもしれないです。マーカスのように自分の意思を汲み取ってくれるタイプとは円滑なコミュニケーションが取れるけれど、レオはそういう性質ではなさそうですね。
だけど、人間として相性が悪いことが親子の愛情を否定するとは限らないのだと思います。お互いの肩書きを取ってしまえば、よくある不器用な父と息子の構図なのでしょう。 -
週一かと思ってたからめちゃうれしい